尿に蛋白がおりている!?~尿蛋白~
- 2021年7月23日
- 腎臓内科
こんにちは、このブログをご覧いただきありがとうございます。
はたなかクリニック院長の畑中雅喜です。
今回は検尿異常の中でも尿蛋白を取り上げます。
尿蛋白とは
尿蛋白という言葉は聞かれたことがあると思います。
検診で尿蛋白が1+と指摘されたり、お医者さんに「尿にタンパクがおりてますよ〜」と言われたりという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
尿蛋白とは、その名の通り、尿の中のタンパクのことです。
ちなみにタンパク尿というと、ほとんど同じように聞こえますが、タンパクを含む尿、という意味になります。
尿蛋白の原因
尿蛋白の原因はさまざまですが、なんらかの病気のために生じた尿蛋白と、病的な意義がない(放置しても問題ない)尿蛋白があります。
病的意義がない(放置しても)問題ない尿蛋白としては、
・起立性尿蛋白
・運動性尿蛋白
があります。
起立性尿蛋白とは、横になって安静にしている(例:寝ている)状態では尿蛋白がでないのに、立ったり座ったりすると尿蛋白が出るようになるものです。
運動性尿蛋白とは、激しい運動や、過労、発熱ののちにその時だけ生じる尿蛋白です。
両者とも放置しても問題ありません。
しかし、放置しておくと問題となる尿蛋白もあります。
尿は血液がろ過されて作られるのですが、通常は血液中の蛋白は尿にはもれないような仕組みになっています。この仕組みが破綻していたり、血液中の蛋白が病的に増加したために尿にもれてしまったり、尿の通り道(尿管、膀胱、尿道)に炎症が生じたりした場合に尿蛋白が生じます。
尿蛋白の検査
まずは尿蛋白が病的かどうかを判断するために、何回か繰り返して尿蛋白が出続けるのか、あるいは、朝一番の尿でも尿蛋白が出るのかを確かめます。
それでも尿蛋白が出る場合は、どこから尿蛋白が出ているのか、と尿蛋白の程度をチェックします。
どこから尿蛋白が出ているのかについては、血液検査や尿検査、レントゲンや超音波検査、CT検査などを駆使して調べます。腎臓から尿蛋白が出ている可能性が高い、となった場合は、腎生検という精密検査を行うこともあります。
尿蛋白の程度については、試験紙でチェックするのが一般的です。正常は(-)ですが、尿蛋白が増えるについて(±)、(1+)、(2+)、(3+)となります。
しかし、ここで注意が必要です。
試験紙でチェックする方法は、尿蛋白の「濃さ」をみているため、尿が「濃く」なれば、尿蛋白も「濃く」なります。
例えば、あまり水を飲まずに脱水状態であれば尿が「濃く」なるため、尿蛋白も実際にはほとんど出ていなくても(1+)や(2+)となります。逆に、たくさん水を飲むと尿が「薄く」なるため、尿蛋白が実際にはある程度出ていても、(-)や(±)となることがあります。
実際にどれくらいの尿蛋白が出ているかをしっかり調べるためには蓄尿検査が最も有用で信頼できます。24時間尿をためていただき、それを検査することで尿蛋白の程度を知ることができます。通常は1日で0.15gも出ません。0.15gから0.5gまではちょっと出てますね、0.5gを超えると結構出てますね、3.5gを超えるとかなり出てますね(ネフローゼ症候群といいます)、という感じです。
しかし、蓄尿検査は結構面倒ですよね。
そこで、1回の尿検査で1日の尿蛋白量を推測する方法があります。
1回の尿検査で尿蛋白の濃度と尿クレアチニンの濃度を測定し、尿蛋白濃度を尿クレアチニン濃度で割った数字が1日の尿蛋白量に近似することがわかっているので、それを用いて尿蛋白の程度をチェックします。
尿蛋白ってそんなに大事なの?
尿蛋白が出ていても、普通は無症状です。
健診やたまたま検査した尿検査でひっかかって病院を受診するように言われても、別に痛くもかゆくもないしほったらかしにしている。。。ということも良くあるのではないでしょうか。
しかし、尿蛋白は実は非常に重要です。
尿蛋白の原因としては、腎臓になんらかの病気が生じていることが多いのですが、腎臓以外の病気が見つかることもあります。
さらに、これが非常に重要なのですが、尿蛋白が出ている人は、出ていない人に比べると、将来腎臓が悪くなって透析が必要となる可能性が高いことがわかっています。それだけではなく、心臓病にかかる可能性や、それらのために死亡するリスクも高いことがわかっています(エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018)。
そのため、尿蛋白を指摘された場合は、何も症状がないからと放置せずに、一度は医療機関を受診することを強くおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は尿蛋白についてお話しました。
・尿蛋白は健診などでたまたま指摘されることが多いが、実は非常に重要。
・尿蛋白は将来の透析や心臓病のリスクとなる。
・尿蛋白を指摘された時は、一度は医療機関を受診しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2021/7/23 畑中雅喜