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糖尿病と慢性腎臓病

このブログをご覧いただきありがとうございます。

はたなかクリニック院長の畑中雅喜です。

 

「糖尿病」、ご存じだと思います。

文字通りであれば、「尿に糖が出てくる病気」、ということになりますが、実際には血液中の糖分(血糖)が上昇することによって生じる様々な異常が問題となります。

糖尿病について書いたブログもよければご覧ください。

 

糖尿病と同じくらい重要な生活習慣病として高血圧があり、高血圧と慢性腎臓病の関わりも書いていますが、糖尿病も、慢性腎臓病の立場からみて負けず劣らず非常に重要な疾患です。

 

ということで今回は糖尿病と慢性腎臓病の関連についてお話したいと思います。

 

今回の内容

・糖尿病が慢性腎臓病発症の原因となる

・糖尿病は慢性腎臓病進行の原因となるのか?

・慢性腎臓病が糖尿病に及ぼす影響

 

 

糖尿病が慢性腎臓病の原因となる

下の図は、糖尿病を発症してからの腎臓病の経過を示したものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

糖尿病を発症して5年程度経過すると徐々に尿に蛋白が漏れてきます。最初はその量は微量で、「微量アルブミン尿」といいます。特に症状はなく、血液検査をしてもクレアチニン(腎臓の機能を測る検査)は変化がなく、尿検査をしてみないと分からない状態ですが、確実に病気は進行しています。

 

そこからさらに時間が経過すると、「顕性アルブミン尿」という状態となり尿蛋白の量が増えてきます。場合によっては尿の泡立ちや足のむくみなどで気づくこともありますが、まだ腎機能はなんとか正常範囲で保っていることもよくあります。しかし、ここからは腎機能があっという間に低下していき、あれよあれよと透析が必要となってしまうことが多いです。

 

つまり、

 

糖尿病発症→微量アルブミン尿→顕性アルブミン尿(蛋白尿)→腎機能低下→透析

 

となります。

 

この経過は「糖尿病性腎症」として典型的なパターンですが、最近はそこまで尿蛋白がでていないうちから腎機能が低下しているパターンも増えてきました。そのため最近は名称が少し変わって、「糖尿病性腎臓病」と呼ぶようになっています。

糖尿病は慢性腎臓病進行の原因となるのか?

では発症した糖尿病性腎臓病は、糖尿病のコントロールが悪いとさらに腎臓病を悪化させるのでしょうか?

 

現時点での答えは、

 

「早期はYESだが、ある程度進行しているとなんともいえない」

 

となります。

 

糖尿病患者の血糖をきっちり下げることにより微量アルブミン尿が出現する頻度を抑えたという報告はいくつか存在しており(1)~(4)、また蛋白尿が増加することも抑えたという報告(5)もあります。

 

すなわち、糖尿病によって慢性腎臓病が発症して早期のうちは、しっかり糖尿病を治療することによって、腎臓病が進展することを抑えることができるということです。

 

しかし、ある程度進展してしまってから糖尿病の管理をしっかりしても腎臓が悪くなることを防ぐことができる、という研究結果はあるのはあるのですがまだ確定的ではありません。

 

ではある程度腎臓が悪くなってしまったら、もう糖尿病を治療する意味はないのか、というと全くそんなことはありません。人間の身体は腎臓だけではないので、その他の臓器への影響ということを考えれば、やはりある程度しっかり治療することは重要です。

 

先ほども少し述べましたが、早期の糖尿病性腎障害では自覚症状が全くない(尿検査をしてみないとわからない、あるいは尿検査でも異常所見がない)状態なのですが、その状態の時にしっかり糖尿病の治療をしておかないと、あとで症状が出たり腎機能が低下してきてからあわてて糖尿病の治療を頑張り始めても腎臓は遅かれ早かれ悪くなってしまう、ということですね。

 

慢性腎臓病が糖尿病に及ぼす影響

高血圧は慢性腎臓病を悪化させ、逆に慢性腎臓病によって高血圧は悪化するのですが、糖尿病は少し違います。

 

慢性腎臓病が進行しても(=腎機能が増悪しても)糖尿病は悪化しません。

場合によっては、糖尿病の治療薬が体内から尿に排泄されにくくなって血糖を低下させる効果が長引いてしまい、低血糖になることもあります。

 

また、糖尿病のコントロールの指標として一般的に用いられるHbA1c値も、腎機能が低下するに従って見かけ上低下する(=実際には低下していないのに、低下しているように見える)ことが知られています。

 

腎機能が悪い患者さんには使える薬も少なくなってしまい、糖尿病管理は難しいのですが、きびしくしすぎないことも重要となってきます。

 

まとめ

・糖尿病が慢性腎臓病発症の原因となる

・糖尿病は早期慢性腎臓病進行の原因となる

・ある程度進行した慢性腎臓病は、糖尿病の治療をしっかり行っても進行してしまう

・慢性腎臓病が進行すると糖尿病の管理は難しくなる

 

いかがでしたでしょうか。

なかなか難しい話でしたね。

 

現在、透析となる患者さんの原因の第一位は圧倒的に糖尿病です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この状況を改善するには、自覚症状がない、下手をしたら血糖値が高いこと以外に異常はない時からしっかり治療をしないといけない、ということです。

 

数年後に透析になるのをさけるために今から一緒にがんばりましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

2022/02/23 畑中雅喜(腎臓専門医・指導医)

 

(1)Duckworth W, et al. N Engl J Med 2009; 360: 129-39

(2)Nathan DM, et al. N Engl J Med 1993; 329: 977-86

(3)Shichiri M, et al. Diabetes Care 2000; 23 Suppl2: B21-9

(4)Ismail-Beigi F, et al. Lancet 2010; 376: 419-30

(5)Perkovic V, et al. Kidney Int 2013; 83-517-23