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肺炎にかかりにくくするために

こんにちは、このブログをご覧いただきありがとうございます。

はたなかクリニック院長の畑中雅喜です。

 

今回は肺炎球菌ワクチンをとりあげます。

 

肺炎はコワイ

肺炎とは、口や鼻からなんらかの菌(ウイルスや細菌など)が侵入し、それによって肺で炎症が生じた状態を言います。

菌が入るだけでは肺炎になるとは限らず、菌の強さや、その人の免疫力(菌に対抗する力)も影響します。

 

日本では肺炎は死因として多く、2020年は悪性新生物(ガン)、心疾患、老衰、脳血管疾患に次いで5位でした。2020年の死因で肺炎は5位でした

そして、その肺炎を引き起こす菌は、高齢者では肺炎球菌という菌が最も多くなっています。その肺炎球菌は重症化することも多く、65歳以上では重症化した時の致命率が9.1%と報告されています。約11人に1人亡くなるって、非常にコワイですね。65歳以上では肺炎球菌による感染症による死亡率が9.1%でした

 

肺炎球菌ワクチンで肺炎予防

肺炎球菌による肺炎にかかった場合、治療としては抗菌薬があります。通常は抗菌薬が良く効くのですが、最近は抗菌薬が効きにくい肺炎球菌もあり、その場合は治療がなかなかうまくいかなくなる可能性があります。

 

また、たとえ抗菌薬が良く効く肺炎球菌であったとしても、肺炎によって入院が必要な程度まで重症化してしまうと、特に高齢者では入院してベッド上で寝ている時間が長くなり足腰が弱ることもあります。さらに、住み慣れた場所から一時的にでも離れることによって認知症がすすむこともあります。

 

そのため、肺炎にかかってから治療を始めるのではなく、かからないように予防することが重要になります。

 

予防の方法として、肺炎球菌には肺炎球菌ワクチンがあります。

 

肺炎球菌にはいくつかの型があることが知られていますが、肺炎球菌ワクチンはそのうちのすべてではなく、重要な型に対して効果があります。

 

高齢者施設の入居者では、肺炎球菌ワクチンを接種することで肺炎球菌による肺炎にかかる割合を64%減らし、それによって亡くなることを減らしたと報告されています。それだけではなく、肺炎球菌以外の菌による肺炎にかかる割合までも45%減らしたとされています。

 

また、肺炎球菌は小児から成人に伝播することが示唆されていますが、2013年に小児への肺炎球菌ワクチン定期接種(公費による補助が受けられる)が始まると、小児だけでなく、成人でもワクチンに含まれる型による肺炎が減ったとされており、そのことが影響しているのかどうかはっきりはしていませんが、2015年以降の肺炎による死亡率が低下しています。

 

肺炎球菌ワクチンの副作用

ワクチンによる副作用(本来の目的である免疫獲得以外の反応)は副反応と呼ばれます。

 

よくある副反応として、

・注射部位反応(痛み、熱感、腫れ、発赤など)

・倦怠感、悪寒、発熱

・頭痛

などがあり、必要な場合は治療します。

 

その他に重要な副反応としてアナフィラキシーがあります。

これは、決して頻度が多いわけではありませんが、接種直後(5~30分が多いが、数時間後のこともある)に皮膚症状(全身がかゆくなったり、赤くなったりする)や呼吸器症状(息苦しくなったり、息がしにくくなったりする)、消化器症状(吐いたり、下痢をしたりする)、全身症状(血圧が下がったりぼーっとしたりする)などの症状が出るもので、適切に治療されないと命にかかわることもあります。

そのため接種した後はそのような症状が出ないか体の状態をしっかりをみる必要があります。

 

肺炎球菌ワクチンの費用

肺炎球菌ワクチンには定期接種と任意接種があります、

 

定期接種は全額ではありませんが、自治体による費用の補助があり、成人であれば一生で1回だけ対象となります。

 

2021年度の定期接種の対象者は、

 

①2021年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる人

②2021年度に60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方(身体障害者1級相当)

 

となります。

 

それ以外の方は任意接種となり、費用は自己負担となります。ワクチンの種類(2種類あります)や接種する医療機関によっても異なりますが、概ね1万円前後となります。

 

1万円もすると聞くと高いと感じると思います。しかし、ワクチンの種類や接種したタイミングにもよりますが、毎年接種する必要はなく数年に一度程度であることや、このワクチンを接種することで入院する必要がなくなれば十分に元を取れるのではないでしょうか。

 

高齢者や呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病、慢性腎疾患、血液疾患などのある方や、免疫力が低下している方、そのような病気をもっている方、免疫力を抑える薬を飲んでいるような方は特に肺炎球菌感染症のリスクが高いとされていますので、肺炎球菌ワクチン接種をおすすめします。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は肺炎球菌ワクチンをとりあげました。

 

・肺炎による死亡者数は多く、中でも肺炎球菌が最も多い。

・肺炎球菌ワクチンを接種することによって予防できる可能性が高い。

・予防接種による副反応の可能性はあるが、対処は可能。

・接種するための費用はかかるが、入院を防げるとしたら元は取れるのではないでしょうか。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

2021/08/09 畑中雅喜