風邪とは
- 2021年6月10日
- 内科全般
こんにちは、このブログをご覧いただきありがとうございます。
はたなかクリニック院長の畑中雅喜です。
今回は「風邪」のはなしです。
「風邪とは」
「風邪を引いたことがありますか?」
と聞かれると、ほぼすべての人が
「ある」
と答えるのではないでしょうか。
私も引いたことがあります。
それこそ学生時代は季節の変わり目には必ずといっていいほど風邪を引いて、咳や鼻水が1ヶ月近く続く、という状態でした。3ヶ月のうち1ヶ月は風邪を引いていました。ただ、別にもともと病弱というわけでもなく、卒業して仕事が始まってからはあまり引かなくなりました。気持ちの問題だったのでしょうか!?医者が言うのもなんですが、「病は気から」だったのかもしれません。。。
では、「風邪って何ですか?」
と聞かれたら、何と答えますか?
「熱が出て咳がでて鼻水が出て喉が痛くなって・・・」
とか
「ちょっと調子悪くなるけどすぐに治る」
というように症状で説明することもあれば、
最近の新型コロナウイルス感染の流行に伴って、いろいろな情報が知られるようになり、
「以前からあるコロナウイルスなどのウイルスによって生じるもの」
というような言い方もできるかもしれません。
「風邪」の定義
実は、医学的にも「風邪」とはどのようなものか、きっちりと定義が決められているわけではありません。専門的には「感冒」や「かぜ症候群」と言われ、色々な定義が提唱されていますが、
「様々なウイルスによって起こる症候群で、良性の自然軽快する症候群」
というような定義が一般的と考えられます。
「風邪」の症状
風邪の症状は何?と聞かれると、「咳とか鼻水とか喉の痛みとか熱とか」という答えになります。様々な症状がでるので「症候群」となります。
これらの症状が1つしかない、あるいはどれかの症状だけ特別強い、という場合は風邪ではなく、その他の病気である可能性もあります。
そのため、「風邪」と診断するためには「風邪以外の病気」ではないことを証明しないといけないのですが、現実的には1回の診察ですべてを見極めることは困難です。
そのため、風邪が「良性の自然軽快する症候群」であることを利用し、最初の時点で必要な治療を行った上で時間経過をみる、というのも治療のひとつになります。「自然軽快する」ので、ある程度時間はかかるものの症状は徐々に良くなっていくのが普通です。そうではなかった場合に、経過をふまえて別の病気の可能性を考えていく、ということもよくあります。病院でよく「しばらくして良くならなかったらまた来てください」と言われるのはそういった理由からです。
「風邪」の治療
風邪は「様々なウイルスによって」生じるものであり、一般的にウイルスには抗生物質は効果がありません。
病院で抗生物質をもらって、なんとなく良くなったという経験をされた方も多いと思いますが、それが本当に「風邪」であれば、抗生物質によって良くなったのではなく、「自分の治癒力で自然に治していた」だけなのです。
最近は抗生物質の乱用によって、抗生物質が効かない菌が増えてきており世界的に問題となっています。抗生物質が不要な病気には投与しない、というのが基本であり、当たり前のことなのですが、「抗生物質が不要かどうか」を見極めることが我々医療従事者からしても難しいことがよくあり、もし抗生物質を処方せずに悪化したらどうしよう、という不安からつい抗生物質を処方してしまう、ということになってしまいがちです。患者さんとしても、抗生物質をもらった方が安心、という心理があり、本来は不要な抗生物質を求めてしまう、ということがよくあります。その気持ちはよくわかりますし、自分が風邪をひいた時はやはり早く治したいので抗生物質ほしいな、と思ってしまいます。
しかし、そうならないためにしっかり病気を見極めることが我々の仕事であり、抗生物質の処方なし、という治療に納得していただけるようにきちんと説明することが我々の義務であると考えます。
その上で、症状に応じた薬を使い、時には漢方薬も併用し症状を和らげ、自己治癒力で風邪が治るのを待つ、といのが原則です。
そうは言っても、風邪をひいてしまったら、なるべく早く治したい、そのための方法がいろいろと巷では言われています。それらについてはまた別の機会にお話できればと思います。
「風邪」と新型コロナウイルスの関係
2020年から世界的に流行している「新型コロナウイルス」の存在が話をややこしくしています。
「新型」というくらいなので、「旧型」もあり、もともとコロナウイルスは普通の風邪を引き起こすウイルスとして知られていました。しかし2002年のSARSや2012年のMARSのように重症化するコロナウイルスが報告され、今回の「新型コロナウイルス」も重症化するリスクのあるコロナウイルスです。
「新型コロナウイルス」の初期症状は普通の風邪との区別が非常に難しく、ウイルスが存在するかどうかのPCR検査などを行わないと判断ができません。そのため、そのような検査ができない医療機関では、普通の風邪と思って診療したら実は「新型コロナウイルス」による感染症で、院内で感染が広がってしまう、という事態を避けるために「発熱患者の診療ができない」となってしまいます。
このブログを書いている時点(2021/6/10)では、ようやくワクチンが広まってきており、徐々に情勢が変わっていく可能性もありますが、まだまだ油断はできない状態です。
「新型コロナウイルス」についてもどこかのタイミングで書きたいと思います。
いかがでしたでしょうか。
「風邪」は誰にとっても身近な病気です。そのため油断しがちですが、昔から「風邪は万病の元」と言われます。風邪をこじらせて重症化する、あるいは、風邪と思っていたら全く別の重大な病気であった、ということがあるので、「いつもの風邪とちょっと違うな」と思ったら受診しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2021/6/10 畑中雅喜