足がむくむんですけど・・・~ネフローゼ症候群~
- 2021年8月12日
- 腎臓内科
こんにちは、このブログをご覧いただきありがとうございます。
はたなかクリニック院長の畑中雅喜です。
今回は浮腫(むくみ)を引き起こす原因としてのネフローゼ症候群を取り上げます。
浮腫(むくみ)とは
浮腫(”ふしゅ”と読みます)は一般的にはむくみと言われます。
皮膚の下の皮下組織に余分な水分がたまっている状態のことを言います。
「うるおっている」レベルをこえて「余分な」水分がたまっている状態であり、3kg程度の余分な水がたまってはじめて浮腫としての症状が出現するとされています。
余分な「水分」ですので、重力にしたがって分布します。
具体的には、立ったり座ったりしていると足の甲やすねに、横になっていると顔や手に、寝たきりの人だと腰や背中にむくみが生じます。
夕方に足がむくんでいても、朝起きると足のむくみはとれてすっきりしていて、そのかわりに顔や目がはれぼったくなっているのは、そういう理由なんですね。
ですので、足がむくんでいる時には、足をあげて寝ていれば確かに足のむくみはひきますが、その分顔や手がむくむだけであり、「余分な水分を別の場所に移動させている」だけなんです。
とは言うものの、足がむくんでいると足が重くなるし、見た目にもあまりうれしいものではないですよね。わかります。さらにひどくなると(すなわち、余計な水分がさらに体にたまると)、皮下組織に水分がたまるだけでなく、胸の中(胸の壁と肺の間)にも余計な水分がたまり、肺がおぼれてしまい呼吸困難が生じることもあり、こうなれば最悪命にかかわることもあります。
ですので、たかがむくみと軽く見ないで、しっかりと原因を調べることが重要です。
浮腫(むくみ)の原因
浮腫の原因としては、
・心臓(心不全など)
・腎臓(ネフローゼ症候群など)
・肝臓(肝硬変など)
・甲状腺(甲状腺機能低下症など)
などに異常がある場合や、
・アレルギー
・炎症
・リンパ管閉塞
などや
・姿勢(ずっと同じ姿勢など)
・塩分のとりすぎ
・お酒の飲み過ぎ
などがあります。
今回はこの中でも腎臓に異常がある場合の1つとして、ネフローゼ症候群をとりあげます。
ネフローゼ症候群とは
ネフローゼ症候群とは、浮腫を生じる疾患の1つで、腎臓の病気です。
尿に多量の蛋白が漏れることで血液中の蛋白が減少し、結果としてむくみが生じたり腎機能が悪化したりします。
具体的な診断基準を示します。
尿蛋白は正常では0.15g/日以下ですが、それが3.5g/日を超え、そのために正常では4.0~5.0g/dlである血液中のアルブミン(タンパク質の一種)が3.0g/dl以下となってしまった状態をネフローゼ症候群といいます。
尿蛋白は1日蓄尿して測定することが理想ですが、蓄尿することが困難な場合は1回の尿検査で代用できます。尿中の蛋白濃度を尿中のクレアチニン濃度で割れば、ほぼ1日の尿蛋白に近似することがわかっているのです。
血液中のアルブミンが低下することにより浮腫が生じやすくなりますが、全員がむくむというわけではありませんので、浮腫はネフローゼ症候群と診断するために必須ではありません。
ネフローゼ症候群と気づくきっかけとしては足や全身のむくみ、体重増加が多く、それ以外では尿の泡立ちや検診でたまたま、ということもあります。
ネフローゼ症候群の原因
ネフローゼ症候群の原因は大きく2つに分けることが出来ます。
①腎臓そのものの異常
②腎臓以外の病気の影響
代表的な疾患を以下に示します。
①腎臓そのものの異常は一次性ネフローゼ症候群と呼ばれ、年齢によって生じやすい病気がある程度決まっています。例えば、小児では微小変化型ネフローゼ症候群が多い、高齢になると膜性腎症が多い、などです。発症のスピードや血液・尿検査などもふまえて推測しますが、診断を確定するためには腎生検が必要となります。腎生検とは、背中から細い針を刺して腎臓の一部を採取し、顕微鏡で調べるという検査で、入院が必要となります。
②腎臓以外の病気の影響は二次性ネフローゼ症候群と呼ばれます。こちらも診断を確定するためには腎生検が必要となるのですが、全員に腎生検を行うのは現実的ではないので、病歴や血液・尿検査、エコーやCT検査などを駆使して推測することが多いです。
ネフローゼ症候群の治療
ネフローゼ症候群で困ることの代表的な2つは、むくむことと、腎機能が低下することです。それぞれで困る場合に治療を行いますが、原因疾患によっては時間がたてば自然に改善するものもありますので、対処療法を行いながら経過観察をすることもあります。
ネフローゼ症候群に対する根本治療でよく使われる薬はステロイドです。最初に大量のステロイドを用い、徐々に時間をかけて減量していきます。1~2年で完全に中止できることもあれば、少量を一生飲み続けるということもあります。というのも、ネフローゼ症候群は再発することがあるからです。
ステロイドだけで効果が乏しい場合は、免疫抑制剤を追加することもあります。
対処療法としては、浮腫に対して利尿薬を用いたり、脂質異常症に対してコレステロールを下げる薬を用いたりします。漢方薬を用いることもあります。
食事も重要となります。
特に減塩が重要で、塩分を1日6g未満におさえることを目標とします。減塩できればむくみにくくなります。
タンパク質は摂取しすぎると尿蛋白が増えて良くないのですが、控えすぎると栄養障害となることもあるので1日あたり0.8g/体重kg(体重50kgの方では1日あたりのタンパク質40g)が推奨されています。微小変化型ネフローゼ症候群では1.0g/体重kgとされています。
以前はネフローゼ症候群では安静にするように言われていたこともありますが、現在では安静は推奨されていません。むしろ体を動かした方がいい面も多いとされています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は浮腫と、それを引き起こす病気としてのネフローゼ症候群を取り上げました。
・浮腫とは皮下組織に余分な水がたまっている状態をいう。
・浮腫を引き起こす腎臓の病気としてネフローゼ症候群がある。
・ネフローゼ症候群の原因として一次性と二次性がある。
・ネフローゼ症候群の治療はステロイドを中心とした根本治療と、利尿薬などの対処療法がある。
・減塩が非常に重要。
以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2021/08/12 畑中雅喜