この尿の色っておかしいの?
- 2021年10月9日
- 腎臓内科
このブログをご覧いただきありがとうございます。
はたなかクリニック院長の畑中雅喜です。
トイレで自分のおしっこの色を見てびっくりしたことはありますか?
私は今のところは幸いありませんが、それでも毎回同じ色をしているかと言われるとそんなことはありません。トイレに行く時間帯や体調などによって多少の色の違いはあります。
今回は尿の色についてお話しします。
・正常の尿の色
・尿の色の異常
正常の尿の色
尿は普通は薄い黄色です。
黄色の原因はウロクロムというものです。
血液中の赤血球は寿命を迎えると肝臓で分解されて、ビリルビンが産生されます(このビリルビンが過剰になると黄疸になります)。そのビリルビンは腎臓で一部代謝されてウロクロムという黄色の物質になります。
そのため、色素の原因となるウロクロムは1日に尿に排出される量は一定(1日あたり約70mg)であり、尿量が多いと希釈され薄くなり、逆に尿量が少ないと濃くなります。
ちなみに、そのウロクロムによって何か病気が生じるとかいうことはありません。
尿の色の異常
・濃い黄色
例えば朝一番の尿は、だいたい皆さん濃いめではないでしょうか。寝ている間の尿は濃縮されるため濃くなります。他にも水分をあまり摂っていない時や、熱中症や脱水症などでも尿が濃くなります。
病的な場合として、ごく少量の血液が混じっている場合も尿量によっては血尿とならずに濃い黄色の尿となります。これは検査してみて初めてわかるものです。
また、ビタミンB2のサプリメントを飲んでいる時や、病院で処方される止血剤(カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム)や結核治療薬(リファンピシン)などを内服している時も濃い黄色となることがあります。
さらに、本来であれば水分をたくさん尿として出さないといけないのに、それが出来ずに尿が濃くなってしまう、という病気もあります。例としては、心不全や肝不全、腎不全などがあります。
・透明
たくさん水を飲んだ後は尿は限りなく薄くなり、ほぼ透明にまでなることもあります。
病的なものとしては、異常の尿量が増えてしまう病気があります。代表的なものとして、糖尿病や、尿崩症という病気があります。
・赤色
代表的なものは血尿です。
血尿の原因は様々ですが、腎臓~尿管~膀胱~尿道という尿の通り道のどこかで出血してれば血尿となることがあります。尿潜血について書いたこちらのブログもご覧ください。
血尿以外で赤い尿となる場合もあります。
ヘモグロビン尿は赤血球がなんらかの原因で急激に大量に壊された(溶血)場合に、赤血球の中にあるヘモグロビンが尿に出てくることによって生じ、赤い尿となります。溶血が生じる病気(発作性夜間血色素尿症や溶血性尿毒症症候群など)もありますし、植物やヘビなどの毒によって溶血が生じる場合もありますし、長時間の歩行や剣道などのスポーツによる踏み込みなど激しい運動によって生じる場合もあります。
ビリルビン尿は肝臓や胆のうなどの病気によって増加したビリルビンが尿にも含まれることによって生じ、濃い黄色~褐色の尿になります。黄疸が同時に出ていることが多いです。
ミオグロビン尿は筋肉に含まれるミオグロビンが大量に尿に排出されることによって生じ、褐色尿となります。筋肉が大量に破壊されているということになるので原因を調べることが重要です。横紋筋融解症という病気が有名で、例えば地震などでがれきにはさまれて動けなくなり筋肉が破壊され、救出後にその破壊された筋肉から多量のミオグロビンが腎臓に流れ込みミオグロビン尿が生じます。この場合には急性腎障害も生じることがあり、集中治療が必要となることもあります。
・混濁、乳白色
尿は普通は透明ですが、混濁することもあります。
食事の影響(ほうれん草やたけのこ、バナナ、チョコレート、紅茶、コーヒー、抹茶などの取り過ぎ)でシュウ酸カルシウムの結晶が生じた場合に混濁します。シュウ酸カルシウムは尿路結石の原因でもあるので注意が必要です。
尿量が少なすぎて混濁することもあります。
膀胱炎など、尿になんらかの菌が感染した時も混濁することがあります。この場合は尿に多量の白血球が含まれることが原因です。この場合は血尿となることもあります。
・その他の色
その他にもなんらかの薬などによって緑がかったり、黒に近くなったりすることもありますが頻度は多くありません。
頻度は多くないのですが、たまに見るのが紫色バッグ症候群と言われる紫色の尿です。
排尿障害などで尿道カテーテルを長期間留置された患者さんの採尿バッグからカテーテルまでが紫色になることがあります。
原因は慢性便秘症と尿路感染症とされています。
慢性便秘によって腸内細菌が異常繁殖し、トリプトファンがインドールに分解され、腸から吸収され肝臓でインジカンに分解され腎臓から尿に排出されます。
ある種の細菌による尿路感染症が伴うと、そのインジカンが細菌の発生する酵素によって青色のインジゴブルーと赤色のインジルビンになり、その色素がポリマーやプラスチックに溶け込む性質があるために採尿バッグで混じり紫色になる、というものです。
紫色となること自体は放置してもかまわないのですが、便秘症への対応や、場合によっては尿路感染症への対応も必要になることがあります。
まとめ
・尿は通常はうすい黄色だが、尿量によって濃くなったりうすくなったりする。
・食べ物や薬の影響を受けていることも多い。
・尿の色によってはなんらかの病気のサインであることがある。
いかがでしたでしょうか。
私自身も普段はそんなに尿の色を意識していたわけではありませんが、お昼前にこのブログを書いてあらためて興味をもってトイレに行ったら透明に近い色でした。最近は朝起きてからなるべく水分をとるように心がけているので、その効果ですかね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2021/10/9 畑中雅喜(腎臓専門医・指導医)