高血圧とは
- 2021年6月18日
- 内科全般
こんにちは、このブログをご覧いただきありがとうございます。
はたなかクリニック院長の畑中雅喜です。
今回は高血圧についてお話しします。
高血圧とは
高血圧とは、文字通り血圧が高い状態のことです。
高血圧治療ガイドライン2019によると、高血圧の定義は140/90mmHg以上とされています。
140/90mmHgの「140」は収縮期血圧、いわゆる「上の血圧」です。「90」は拡張期血圧、いわゆる「下の血圧」です。mmHgは「ミリメートルエイチジー」あるいは「ミリ水銀」や「ミリメートルマーキュリー」と読みます。マーキュリーとは水銀の英訳です。水銀柱を押し上げる力のことで、例えば140mmHgだと、「水銀柱を140mm(14cm)押し上げる力」ということです。
ただ、会話の中では単位は読まないことが普通ですね。「今日の血圧は130の80ですね~」という感じで聞かれたことが多いのではないでしょうか。
さきほど、「高血圧の定義は140/90mmHg以上」と書きましたが、色々と注意することがあります。
まず、140/90mmHgよりも低ければ正常というわけではない、ということです。
高血圧は140/90mmHg以上ですが、正常血圧は120/80mmHg未満となっています。その間は正常高値血圧と高値血圧とにさらに細分化されています。
また、この定義は診察室で測定したものです。自宅などで測定する家庭血圧の場合は、高血圧の定義は135/85mmHg以上となります。また、自由行動下血圧という、24時間血圧を測定する方法があるのですが、その場合は高血圧は130/80mmHg以上とされています。
なかなかややこしいですね。
おおざっぱにまとめると、
・正常血圧は120/80mmHg未満
・高血圧は140/90mmHg以上
・診察室血圧よりも家庭血圧の方が低く設定されている
という感じです。
高血圧の原因
日本の高血圧者数は約4300万人と推定されています。日本人口を約1億2000万人とすると、日本人の約35%が高血圧に罹患していることになります。かなりの数字ですね。れっきとした国民病といっても過言ではありません。
そのうち9割が本態性高血圧とされています。
本態性高血圧とは、高血圧の原因がはっきりしないもの、その多くは遺伝や生活習慣(肥満、塩分の取り過ぎ、お酒の飲み過ぎ、睡眠不足、ストレス、運動不足など)によるものです。
残りの1割は二次性高血圧とされ、血圧が上がる原因がある高血圧です。
原発性アルドステロン症といって、血圧をあげるホルモンであるアルドステロンが過剰に産生される疾患や、腎機能障害にともなう高血圧など様々な原因があります。若くして発症した高血圧や治療の効果が乏しい高血圧、重度の高血圧では特にこれらの二次性高血圧の存在を疑って検査をする必要があります。
高血圧の症状
一般的に高血圧には症状はありません。
そのため、高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、知らない間に心臓や脳、腎臓などに障害が生じます。
そうはいっても、血圧が高くて頭痛がしたことがある、という方も多いのではないでしょうか。頭がずきずきする頭痛があり、血圧を測ったら180/100mmHgもあってビックリした、という話もよく経験します。
実は、血圧と頭痛の関係についてははっきりと定まった説はありません。関係があるという研究者もいれば、関係がないという研究者もいます。
血圧と頭痛は確かに関連はあるのですが、「血圧によって頭痛がする」という症状はほとんどが「血圧が高いことに対する不安」から来ているとのことです(Stewart ImcDG. Lancet 1953)。
高血圧を放置するとどうなるか
では高血圧を放置するとどうなるか。
高血圧のある人とない人を比較すると、ある人は脳心血管病になるリスクや、それらによって死亡するリスクが高いことが明らかになっています。
これらのリスクを下げ、より健康で生活の質が保たれるようにするために、高血圧は放置せず、きちんと治療することをおすすめします。
高血圧の治療
高血圧の治療(降圧治療)は大きく分けて2つあります。
1つは非薬物療法、もう1つは薬物療法です。
・非薬物療法・・・減塩を中心とした食事療法、運動、アルコール制限、肥満の改善など
・薬物療法・・・降圧薬の投与
どちらも大事な治療ですが、原則はまず非薬物療法です。薬を用いずに生活習慣の改善だけで治療できればそれにこしたことはありませんよね。
それだけでは足りずに薬物療法を行う場合でも、非薬物療法は重要です。薬を飲んでいるから大丈夫、と生活習慣が改善できなければ治療はうまくいきません。そういう意味では、高血圧の治療は医療従事者だけで行うものでもなく、患者さんだけで行うものでもなく、お互いに協力して行うもの、という認識が重要だと思います。
症状がないのに治療を続ける、というのはなかなか大変で、どうしても続かないこともよくあります。
お気持ちはよくわかります。
目に見えないリスク(将来脳卒中や心臓病になるかもしれない)のために、何も症状がないのに単なる数字(血圧の値)におどらされて長期間にわたって薬を飲み続けないといけない、というのはなかなかの苦痛だと思います。
それでも我々医療従事者が治療をすすめるのは、目に見えなかったリスクが目に見えてしまった時(すなわち、脳卒中や心臓病が発症してしまった時)に、その患者さんや、周りの家族の方、関係者の方に与える影響が少なからずあることを知っているからです。
もっときちんと治療を受けていれば、あるいは治療を行っていれば、という患者さんを何人も診ているので、あなたにはそうなってほしくないと思い治療をおすすめします。
治療の主役はあくまでも患者さんです。納得してしっかり治療を受けていただけるように、患者さん一人一人にあった治療を提案し、治療に対するモチベーションを保てるように全力でサポートいたしますので、お気軽に相談していただければと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
高血圧について、そもそも高血圧とは何か、その原因や症状、放置するとどうなるか、治療について概説しました。
治療の根幹となる食事療法(特に減塩)などについては別の機会で書きたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2021/6/18 畑中雅喜